不動産知識

不動産投資の頭金はいくら必要?目安は物件価格の10%~20%!

不動産投資を始めたいと思っていても、「頭金はいくら用意すればいいのか分からない」「貯金が十分でない気がして踏み出せない」と悩む人はとても多いです。

 一般的に、頭金の目安は物件価格の10〜20%、さらに諸費用などを含めた自己資金全体の目安は15〜30%とされています。ただし、実際に必要となる自己資金は、年収、勤務先、資産状況、ローン条件などによって大きく変わります。

 自己資金は、不動産投資の戦略そのものを決める重要なスタート地点です。どの程度を自己資金として投入するかによって、数年後に選べる物件や投資可能性は大きく変わります。

 本記事では、頭金を用意するメリット・デメリット、自己資金別に購入できる物件価格の目安、実際の物件事例、そしてあなたにとって最適な自己資金割合を分かりやすく解説します。

 この記事を読めば、自分がどれくらいの頭金を用意すればよいかが明確になり、不動産購入に向けて具体的な準備が進められるようになります。ぜひ最後までご覧ください。

不動産投資における頭金とは

「頭金」とは、不動産購入時に物件価格の一部として最初に支払うお金のことです。例えば、1億円の物件を購入する際に、頭金を1,000万円入れる場合、残りの9,000万円をローンで借り入れることになります。

 さらに不動産購入時には、頭金とは別に「諸費用」が必要です。具体的には「不動産会社への仲介手数料」「司法書士報酬」、「印紙税」、「登録免許税」、「不動産所得税」、「火災 保険料や地震保険料」、「ローンを借りる時の事務手数料」などがあります。

諸費用は物件価格の7〜10%程度が目安です

 そのため、「頭金」と「諸費用」を合わせると、物件価格の15〜30%程度の自己資金を準備する必要があります。

頭金を用意するメリット

頭金を用意するメリットは、主に下記3つになります。

  1. 融資の審査に通りやすくなる
  2. 月々の返済額を抑えることができ、利益が多くなる
  3. 金利上昇の影響を受けにくい

 一般的に不動産投資ローンの審査は融資希望額が大きいほど厳しくなり、頭金を入れることで審査に通りやすくなります。しかし、融資審査で評価されるのは自己資金の額だけではなく、ローンを借りる方の年収、勤務先、資産状況など、いくつかの要因によって条件は大きく変わってきます。そのため、自己資金が多くても融資が通らないケースはあります。

 不動産投資における収入の中心は家賃収入です。一方で支出の大部分を占めるのは、ローン返済における元本返済額と利息であり、これに加えて管理費、固定資産税、修繕費などの諸経費も発生します。ローン返済額を抑えることができれば、毎月のキャッシュフローに余裕が生まれ、手元に残る現金が増えるため、収益を確保しやすくなります。

 不動産投資ローンの利息は借入元金に対して発生します。頭金を入れることで借入額(元金)を減らせれば、その分だけ支払う利息も抑えられます。結果として、将来的に金利が上昇した際の影響も小さくなる点は、頭金を入れるメリットになります。

頭金を用意するデメリット

 逆に頭金を用意するデメリットは、下記2つになります。

  1. 不動産投資のレバレッジ効果が薄くなる
  2. まとまった資金が必要になる

 不動産投資の魅力のひとつは、ローンを利用することでレバレッジを効かせられる点です。しかし、頭金を多く入れすぎてしまうと、自己資金に対する収益効率が低下し、レバレッジ効果が薄くなるというデメリットがあります。レバレッジとは、小さな力で大きな力を生み出すテコの原理のこと。投資におけるレバレッジ効果とは、借入を活用することで、元手となる自己資金の収益性を高めることを意味します。不動産投資では、ローンを利用することで、本来は自己資金だけでは手が届かない高額な物件を購入でき、大きな収益を狙える点が大きな魅力です。

 不動産投資ローンを利用する際の頭金の目安は、物件価格の1~2割程度とされています。たとえば、物件価格が5,000万円であれば500万~1,000万円の頭金が必要です。
貯蓄が少ない人にとって、500万円といったまとまった資金を用意するには時間がかかるため、不動産投資を始めたくてもなかなか一歩を踏み出せない大きな要因となっています。

頭金を用意せず購入するフルローン

 フルローンとは不動産を購入する際に物件価格の全額をローンで借り入れることです。つまり、通常は用意しなければならない頭金が不要になり、全額をローンでまかなえることになります。ですが、物件購入にあたって必要となる上記の諸費用分は自分で用意する必要があります。自己資金ゼロで不動産投資を始められるフルローンですが、このような良い条件で融資を受けられるのは厳しい審査を通過した人だけです。

フルローンが出る仕組み

 フルローンが可能になる背景には、金融機関が「返済リスクは十分に低い」と判断できる明確な理由があります。

例えば、下記4つの場合については、フルローンが出る可能性が高くなります。

  1. 申込者の属性が非常に高い(年収、勤務先の安定性、社会的な地位など)
  2. 物件の担保価値が購入価格を上回るほど高い(都心一等地の優良物件など) 
  3. 既に不動産投資事業をされており、不動産投資に関するノウハウや成功実績がある
  4. 金融機関が提携する不動産会社の信用力が非常に高い

フルローンのメリット

 フルローンの最大の魅力は、自己資金を使わずに不動産という大きな資産を取得できる点にあります。手元資金を温存したまま投資をスタートできるため、別の投資案件にも柔軟に資金を振り向けることができます。また、借入をフルに活用することでレバレッジ効果が最大化され、自己資金に対する投資効率(ROI)を非常に高くできる点も、大きなメリットです。

フルローンのデメリット

 返済期間が長くなるほど、物件が自分の資産になるまでに時間がかかり、出口戦略が制限されてしまうリスクがあります。出口戦略とは、購入した物件を最終的にどのように処分するかという方針のことです。

 自己資金ゼロのフルローンで不動産投資を始めた場合、借入額が大きくなる分、返済額を抑えるために返済期間を長く設定しがちです。しかし、返済期間を延ばしすぎると、元本の減りが遅くなり、物件が自分の資産として積み上がるまでに時間がかかります。その結果、物件を売却したいタイミングで十分な利益が確保できない、2棟目・3棟目の追加投資が遅れるといったデメリットが生じやすくなるのです。

投資家の人達がどの程度自己資金を投入しているか

 実際、投資家の人達は物件購入時に、どの程度自己資金を入れているのでしょうか。

https://www.nomu.com/pro/news/2406_4.html 

ノムコムプロ(不動産投資に関する意識調査)

 上記の調査によると、投資用物件購入のために自己資金を何割充当したかの問いに対し、50%以上の人は自己資金2割未満で物件を購入したと回答しています。つまり、多くの投資家は頭金をほとんど入れず、0〜10%程度で物件を取得していると考えられます。一方、自己資金を2~3割(頭金を10%~20%)投入して購入した人は全体の約20%にとどまっています。

 このことから、不動産投資においては「必ずしも多額の頭金が必要ではない」ことが分かります。むしろ、多くの投資家はレバレッジを利かせるために頭金を抑え、借入を活用しながら資産形成を進めています。

 ただし、自己資金を少なく抑えれば返済負担が大きくなり、キャッシュフローや追加投資(2棟目・3棟目)に影響を与える可能性もあります。そのため、頭金をいくら入れるかは、自身の投資戦略・資金状況・リスク許容度に合わせて慎重に判断することが重要です。

安全性と効率性のバランスが大切です

自己資金別!購入できる物件価格と物件例

 不動産投資に必要とされる自己資金割合を20%と仮定すると、手元の自己資金額から購入できる物件価格や物件種別を判断することができます。すでに不動産投資に充てられる自己資金が決まっている場合は、以下のようなシミュレーションを行ってみると、購入可能な物件のイメージがより具体的になります。

自己資金の金額 購入可能物件金額 購入可能物件例
100万円 300万円~500万円 築古戸建て(地方)
築古区分マンション(地方)
300万円 1,000万円~1,500万円 区分マンション(地方)
500万円 1,600万円~2,500万円 区分マンション(都心部)
築古一棟アパート(地方)
1,000万円 3,300万円~5,000万円 区分マンション(都心部)
一棟アパート(地方)
新築戸建て
3,000万円 1億円~1億5,000万円 一棟マンション(都心部)
一棟ビル(都心部)
5,000万円 1億5,000万円~2億5,000万円 一棟マンション(都心部)
一棟ビル(都心部)

 投資したい物件の種類が明確に決まっている場合は、その物件の購入価格から逆算して必要となる自己資金を算出する方法も有効です。あらかじめ自己資金の目安が分かれば、購入可能な価格帯や選ぶべき物件のレベルが具体的になり、無理のない投資計画を立てやすくなります。

 また、自己資金とは別に、突発的な修繕や空室などの不測の事態に備えて、一定の資金余力(予備資金)を確保しておくことも忘れてはいけません。資金に余裕があることで、運営が安定し、不必要な売却や追加借入を避けられるため、長期的な投資成功につながります。

レバレッジも大事。でも投資で欠かせないのは「利益率」の視点

 レバレッジ効果を活用できる点は、不動産投資の大きなメリットです。しかし、レバレッジばかりに注目すると、期待した利益が得られない可能性があります。投資判断においては、レバレッジと同様に「利益率」を意識することが非常に重要です。

利益率の代表的な指標には、ROI(Return On Investment:投資利益率) とCCR(Cash on Cash Return:自己資金収益率) の2つがあります。

ROIは、投資に対してどれだけ利益が得られたかを示す指標で、以下の式で求めます。

ROI=年間キャッシュフロー ÷ 投資金額 × 100

一方のCCRは、投下した自己資金に対してどれだけリターンが得られたかを示す指標で、以下の式で算出します。

CCR=年間キャッシュフロー ÷ 投下自己資金 × 100

たとえば、自己資金1,000万円で物件を購入し、年間キャッシュフローが300万円であれば、ROIもCCRも30%になります。

 しかし、同じ1,000万円の物件を自己資金500万円+借入500万円で購入し、年間キャッシュフローが同じく300万円だった場合、ROIは30%ですが、CCRは60%となり、融資を利用したほうが自己資金効率が高いと言えます。
このように、レバレッジは自己資金の収益性を高める効果があります。

 ただし当然ながら、借入を増やせば増やすほど利息や返済額の負担は大きくなり、毎月のキャッシュフローは悪化しやすくなります。レバレッジを効かせることと、健全なキャッシュフローを両立させることが重要です。

 たとえば、自己資金比率10%と30%の場合で、物件価格1,000万円・年間家賃収入300万円の不動産投資を比較すると、キャッシュフローは大きく変わります。金利2.5%、借入期間10年と仮定し、計算をわかりやすくするため諸費用や空室は考慮しない場合、次のような違いが生まれます。

自己資金比率10%(自己資金100万円・ローン900万円)の場合

家賃収入(年額) 3,000,000円
返済額(年額) 1,018,104円
手残り(年額) 1,981,896円
表面利回り 30%
返済後利回り 19.8%

自己資金比率30%(自己資金300万円・ローン700万円)の場合

家賃収入(年額) 3,000,000円
返済額(年額) 791,856円
手残り(年額) 2,208,144円
表面利回り 30%
返済後利回り 22.8%

 上記のシミュレーションからもわかるように、自己資金比率によってローン返済後の手残り額には大きな差が生まれます。レバレッジを活用すれば、「自己資金だけでは購入できない物件を取得できる」「少ない元手で大きな利益を狙える」といったメリットがありますが、その一方で自己資金比率が高いほど利益率は安定し、金利上昇や資産価値の下落といったリスクも抑えられます。

自分に合った頭金の割合は?

 最適な頭金比率は、投資家それぞれの目的やリスク許容度によって変わります。まずは、自分がどのような姿勢で不動産投資に取り組みたいのかを整理し、その方針に合った資金計画を組み立てることが大切です。

【安全性を重視するタイプ】
「できるだけ着実に始めたい」「毎月のキャッシュフローを安定させたい」と考える方は、物件価格の1〜3割程度を頭金として入れる選択が向いています。頭金を多めに投入することで借入額が抑えられるため、月々の返済負担が軽くなり、運営中のストレスは大幅に軽減されます。また、金利上昇や空室などの不測の事態でもキャッシュフローが悪化しにくく、長期的に堅実な賃貸経営を続けたい人にとって、大きな安心材料になります。

【効率を重視するタイプ】
「資産規模を早く拡大したい」「レバレッジ効果を最大限に活かしたい」という方は、頭金を最小限に抑えることで、手元資金を別の物件に回す戦略が有効です。自己資金効率が高まり、短期間で複数の物件を取得するチャンスが広がります。ただし当然ながら、借入比率が高いほど返済負担は増え、金利変動の影響も受けやすくなります。収支がシビアになるため、返済能力や物件の収益性を冷静に見極め、慎重な判断とシミュレーションが欠かせません。

頭金は“目的→戦略→数字”の順で決めるのが失敗しないコツ。

まとめ

 不動産投資における頭金は、単なる初期費用ではなく、その後の投資戦略全体を決定づける重要な起点となります。将来的に複数の物件を所有して資産規模を拡大したいのであれば、頭金を抑えて早い段階で2件目・3件目の取得に進むというアプローチも現実的です。一方、安定したキャッシュフローを重視し、長期にわたる安定運営を目指すのであれば、頭金を多めに投入して返済負担を軽くし、経営基盤を固めるという選択も十分に考えられます。

 つまり重要なのは、「今、この物件にいくら入れるか」という点だけではありません。
その頭金の選択が、次の投資機会や将来の資産形成にどのようにつながるのかを見据えて判断することが大切です。

 頭金の使い方ひとつで、5年後・10年後の選択肢は大きく変わります。
未来の自分にとって価値ある選択となるよう、目標とリスク許容度に合った形で、戦略的に資金を配分していくことが、不動産投資で成功するための鍵となります。