
一棟アパートのキャッシュフローは、家賃収入からローン返済を引いた金額ではありません。そこからさらに、管理費・修繕費・固定資産税・募集費といった支出が引かれていきます。この差を見落とすと、実際の手残りが購入前の想定を大きく下回ることがあります。
実際、私の2棟目では年間約100万円のキャッシュフローを想定していましたが、実績は約42万円でした。
この記事では、一棟アパートのキャッシュフローの計算構造を整理したうえで、私が実際に保有した2棟の実績を公開します。
読み終えるころには、物件資料を見た瞬間に「この物件なら年間いくら残りそうか」を自分で計算できる状態になっているはずです。業者の収支表を鵜呑みにしなくて済むようになります。
先に結論を書きます。表面利回り11.5%の1棟目で年間約21万円、表面利回り9.06%の2棟目で年間約42万円。2棟合わせても、年間で残ったキャッシュフローは約64万円でした。
1棟目については、保有期間6年7か月の全収支データが手元にあります。総収入2,577万円のうち、最終的に手元に残ったのは140万円(5.46%)だけでした。
2棟目にいたっては、購入時に見込んでいた年間100万円に対して、実績は42万円です。想定の4割しか残りませんでした。なぜそうなったのかを、これから順番に分解していきます。
利回りではなく、実際に口座に残る金額で判断しましょう。
一棟アパートのキャッシュフローとは?計算の基本構造
一棟アパートのキャッシュフロー(CF)とは、1年間の家賃収入から、実際に出ていったお金をすべて引いた残りのことです。「手残り」とも呼ばれます。
式にすると、こうなります。
ポイントは3つあります。
- 満室想定ではなく、稼働率をかけた収入からスタートすること
- ローン返済以外の支出(管理費・修繕費・税金・募集費)を忘れないこと
- 最後に所得税・住民税が引かれること
とくに多いのが、2つ目を丸ごと飛ばしてしまうパターンです。「家賃32万円 − 返済20万円 = 月12万円残る」と計算してしまう。
なお、この記事でこのあと公開する実績は、すべて「税引前キャッシュフロー」の段階の数字です。所得税・住民税は、給与など他の所得や減価償却によって人それぞれ変わるため、物件の実力を比べるにはここで揃えるのが分かりやすいと考えています。
ここで参考になるのが、業界団体が毎年出している運営費のデータです。賃貸住宅を1年間運営すると、家賃収入の何割が経費に消えるのかという統計があります。
NOI率というのは、家賃収入から運営費を引いたあとに残る割合のことです。一棟木造でNOI率81.62%、つまり運営費だけで家賃収入の約18%が消えているということになります。
そしてこの18%には、ローン返済は含まれていません。返済を引く前の段階で、すでに家賃の2割近くがなくなっているわけです。
ちなみに、私の実績はこの平均を大きく上回っていました。管理費・修繕費・募集費用の合計は、1棟目で26.59%、2棟目で30.01%。私の2棟はいずれも築古だったこともあり、少なくとも今回の実績では、全国平均より運営費が重くなりました。
ここまでが教科書的な話です。では、実際の物件ではどうだったのか。私の2棟の数字を見ていきましょう。
結論|私の一棟アパートのキャッシュフローは年間21万円と42万円だった
合計7,700万円分の一棟アパートを2棟持って、年間のキャッシュフローは約64万円。月あたり5万円ちょっとです。
正直、想像していたよりかなり低い数字だと思います。私自身、購入前はもっと残るつもりでいました。
ここで大事なのは、この数字が「失敗」を意味するわけではないということです。実際、この2棟は最終的にどちらもプラスで着地しています。理由は記事の後半で説明しますが、一棟アパートの収益はキャッシュフローだけで測れないからです。
ただ、「毎月の手残りで生活を変えたい」という目的で一棟アパートを買うなら、この水準は知っておくべき現実だと思います。
7,700万円分の物件で、年間のCFは約64万円でした。
1棟目のキャッシュフロー実績|総収入2,577万円の全内訳を公開
1棟目は、2019年9月に3,400万円で購入し、2026年4月に売却しました。
- 購入価格:3,400万円(表面利回り11.5%)
- 構造・戸数:木造 1K × 9戸/築26年
- 借入:3,400万円(フルローン)/金利1.16%/返済期間15年
- 自己資金:218万円(諸費用のみ)
- 満室想定賃料:32.6万円/月
購入時に見えていた「表面上のキャッシュフロー」
購入時、私が見ていた数字はこうでした。
満室想定賃料32.6万円から、ローン返済20.8万円と管理手数料1.7万円を引くと、月10.1万円。年間にすると約121万円です。
表面利回り11.5%の物件で、年間121万円のキャッシュフロー。数字だけ見れば悪くありません。
しかし実際に残ったのは、6年7か月の累計で140万円。年あたりにすると約21万円でした。想定していた121万円の、6分の1です。
売却まで終わったので、保有期間中に入ってきたお金と出ていったお金を、すべて集計しました。
6年7か月で入ってきた総収入は2,577万円。そこから管理費・修繕費・募集費用・ローン返済・税金を引いて、最後に残ったのが140万6,835円です。
比率にすると5.46%。家賃が10万円入るたびに、私の手元に残っていたのは5,460円だった、という計算になります。
なお、比率は総収入に対する割合、年あたりの金額は保有79か月で割った概算です。
家賃100万円は、どこへ消えているのか
同じ数字を、割合で見てみます。
この図を見ていただくと、キャッシュフローが薄い理由がはっきりします。
一番大きいのは、当然ながらローン返済の63.03%です。ただし、その内訳を見ると元金返済が55.02%、支払利息はわずか8.01%。返済額の約87%は、利息ではなく借金の元本を減らすために使われていました。
そして私にとって一番の誤算だったのが、募集費用8.17%(累計210万5,511円)です。
修繕費は厳しめに置いていたのですが、「入居者を決めるためのコスト」が年間32万円もかかるとは思っていなかったのです。
1棟目は1K×9戸の単身者向けでした。単身者は転勤・進学・結婚といったライフイベントで動くため、退去が毎年のように発生します。退去のたびに広告料(AD)と原状回復費がかかり、次が決まるまでは家賃がゼロになる。この繰り返しが、募集費用210万円・修繕費325万円・稼働率90.3%という数字になりました。
つまり、修繕費と募集費用を合わせた20.78%が、退去にともなって出ていったコストということになります。総収入の5分の1です。
そしてもうひとつ、この物件のクセが返済比率の高さです。総収入に対するローン返済は63.03%。融資期間が15年と短かったことが原因です。
返済比率が高いということは、毎月の手残りが薄くなるということです。ここが1棟目のキャッシュフローを削っていた最大の要因でした。
この物件の購入経緯から売却までの全記録は、別記事にまとめています。
2棟目のキャッシュフロー実績|想定100万円が実績42万円になった
2棟目は、2020年11月に4,300万円で購入し、2026年9月に売却の決済を迎えます。
- 購入価格:4,300万円(表面利回り9.06%)
- 構造・戸数:木造 2DK × 6戸+駐車場6台/築27年
- 借入:3,870万円/変動金利2.6%/返済期間23年
- 自己資金:837万円(頭金1割+諸費用)
- 満室想定賃料:32.5万円/月 → 売却時33.6万円/月
1棟目とは意図的に逆の設計にしています。利回りは2.4ポイント低いかわりに、返済期間が23年と長く、毎月の返済負担は軽い。頭金も430万円入れています。キャッシュフローだけを見るなら、こちらのほうが有利な条件のはずでした。
購入前に立てていたシミュレーション
購入前、私は年間100万円のキャッシュフローを見込んでいました。
- 満室想定家賃 32.5万円 × 稼働率90% = 約29.3万円/月
- ローン返済 ▲18.6万円/月
- 管理手数料 ▲1.5万円/月
- 固定資産税の月割り ▲1.3万円/月
差し引き月7.9万円、年間で約95万円〜100万円。稼働率90%という保守的な前提を置いたうえでの数字なので、それなりに堅く見たつもりでいました。
保有期間5年10か月の全収支
こちらも、同じ形式で全収支を出します。
総収入2,433万円に対して、残ったキャッシュフローは246万5,040円(10.13%)。年あたり約42万円です。想定していた年間100万円の、4割ちょっとでした。
良かったことは、稼働率も家賃も想定を上回っていたという点です。稼働率は想定90%に対して実績94.31%。満室想定賃料も32.5万円から33.6万円まで上げることができました。5年10か月で退去はわずか4部屋。運営面では、かなり優秀な物件だったと言えます。
その優秀さは、募集費用3.55%という数字にはっきり出ています。1棟目の8.17%に対して、半分以下です。ファミリータイプで退去が少なかった効果が、そのままコストの差になりました。
それでもキャッシュフローが想定の4割になったのは、修繕費18.54%(累計451万823円)があったからです。総収入の5分の1近くが、建物の修繕に消えました。シミュレーションに1円も入れていなかった項目が、そのまま差額として現れたかたちです。
もうひとつ見逃せないのが、支払利息25.48%(累計619万9,645円)です。金利2.6%・23年で借りた結果、返済額の約半分が利息として消えていました。マイナス金利が終わり、徐々に金利が上がってくる中で、当然この物件の借入にも金利の上昇の波がやってきました。借入れ当初の2年程は2.6%でしたが、その後徐々に上がっていき、決済時には、4.4%まで上がりました。借入れ当初から1.7倍になりました。ここまでくると返済額の半分以上が利息になり、元金返済のスピードが極端に遅くなります。
稼働率は想定超え。それでも修繕費が収入の18.54%を持っていきました。
この物件の購入判断から売却までの詳細は、こちらにまとめています。
なぜ想定より一棟アパートのキャッシュフローが残らなかったのか
2棟の実績から、想定と現実の差を生んだ要因を5つに分解します。
要因①:稼働率100%は、現実には存在しない
私の2棟の平均稼働率は、90.3%と94.31%でした。
正直に言うと、この数字は決して高い稼働率ではありません。年間の6〜10%は家賃が入っていない期間があったということです。6戸の物件なら、感覚としては常にどこかが空いているのに近い状態でした。
賃貸市場全体を見ても、空室は構造的な問題です。総務省の調査によると、全国の空き家900万2千戸のうち、賃貸用の空き家は443万6千戸。空き家全体の49.3%を占めています。
もちろん、これは全国の平均像です。エリアと物件によって状況はまったく違います。ただ、「満室が続く前提」でシミュレーションするのは、市場の実態から離れているということは言えると思います。
要因②:修繕費は、忘れたころにまとめて来る
キャッシュフローを一番削ったのが、この修繕費です。
1棟目は6年7か月で累計325万円、2棟目は5年10か月で累計451万円。年あたりに直すと49万円と77万円、総収入に対する比率で12.61%と18.54%です。
やっかいなのは、毎月定額で出ていかないことです。何もない年もあれば、給湯器とエアコンが同時に壊れる年もあります。2棟目にいたっては、累計451万円のうち約400万円がたった2件の突発的な出来事で消えました。入居者の方が室内で亡くなられたことによる修繕が約200万円、雨水の侵入で崩落寸前になったベランダの修繕が200万円弱です。
建物の修繕には、部位ごとに周期があります。国土交通省のガイドブックでは、屋上防水はおよそ10年、外壁塗装は10〜15年が目安とされています。
要因③:税金は、空室でも必ず出ていく
ここでいう税金は、固定資産税・都市計画税・不動産取得税など、物件にかかる税です。負担は1棟目が総収入の4.92%(累計126万7,740円)、2棟目が5.92%(累計144万900円)。年あたり19万円と25万円でした。
このうち固定資産税・都市計画税は、1棟目が年間約9.5万円、2棟目が年間約16万円。金額そのものは大きくありません。ただ、これは満室でも空室でも、必ず同額が出ていきます。年間21万円しか残らない物件にとって、月割り8,000円の固定費は決して無視できません。
要因④:管理手数料と、募集にかかる広告料(AD)
管理会社への手数料は、一般的に家賃の5%前後です。実績では、1棟目が総収入の5.81%、2棟目が7.92%でした。
見落としやすいのは、こちらではなく募集にかかる費用のほうです。退去が出ると、原状回復費に加えて、次の入居者を決めるための広告料(AD)が発生します。地域や時期によっては家賃の1〜2か月分になることもあります。
ここで、間取りの違いが数字にはっきり出ました。
- 1棟目(1K × 9戸):毎年のように退去が発生 → 募集費用は総収入の8.17%(累計210万円)
- 2棟目(2DK × 6戸):5年10か月で退去4部屋のみ → 募集費用は3.55%(累計86万円)
物件価格も規模もほぼ同じなのに、募集費用だけで約124万円の差がつきました。これは表面利回りの数字には一切出てこないコストです。
単身者向けは利回りが高く出やすいかわりに、入れ替わりが早い。ファミリータイプは利回りが下がるかわりに、入居期間が長い。表面利回りの数字には現れないコストが、間取りによって大きく違うということです。
要因⑤:ローン返済——返済比率がすべてを決める
金額として一番大きいのは、当然ながらローン返済です。
ここで見るべき指標が返済比率——収入に対して、ローン返済がどれだけの割合を占めるかという数字です。実績ベースでは、1棟目が63.03%、2棟目が53.93%でした。
毎月のキャッシュフローを決めるのは金利の高さではなく、返済期間を含めた返済比率だということになります。
ただし、返済の「中身」を見ると、まったく違う景色が見えてきます。
1棟目は返済総額1,624万円のうち、1,418万円(87.3%)が元金返済でした。支払利息は207万円だけです。金利1.16%・15年という条件が効いています。
対して2棟目は、返済総額1,312万円のうち利息が620万円(47.2%)。ほぼ半分が利息です。金利2.6%・23年で借りた結果、返済しても元本があまり減っていきませんでした。
ここが、毎月のキャッシュフローだけを見ていると気づきにくい部分です。2棟目は毎月の手残りが2倍多い一方、元金の減り方は年あたり119万円。1棟目の215万円に対して、およそ半分でした。
1棟目は当初20年で組む予定だった融資が、審査の過程で15年に短縮されました。当時は「手残りが減る」とがっかりしたのですが、結果としてこの短縮が、支払利息を207万円に抑え、元本を1,418万円減らすことにつながっていたわけです。
CFを決めるのは金利より、返済期間を含めた返済比率です。
ただし、これには裏返しがあります。返済期間が短いということは、元本の減りが速いということでもあります。この点は、記事の後半でもう一度触れます。
表面利回りが高くてもキャッシュフローが残るとは限らない
表面利回りの高さと、手元に残るキャッシュフローの多さは、まったく比例しません。
表面利回り11.5%の1棟目が年21万円、9.06%の2棟目が年42万円。利回りが低いほうが、2倍のキャッシュフローを生んでいました。
2棟の比率を並べると、どこで差がついたのかがはっきりします。
2棟目は、修繕費(18.54%)も管理費(7.92%)も支払利息(25.48%)も1棟目より重い。3つの主要コストで負けているのに、最終的なキャッシュフローは2倍でした。
差を生んだのは、この2つです。
- 返済比率の差:63.03%と53.93%。返済期間15年と23年の違いです
- 募集費用の差:8.17%と3.55%。1Kとファミリータイプの、退去頻度の違いです
キャッシュフローで負けた1棟目は、総収入に対する元金返済の割合では大きく上回っています。55.02%対28.45%。手元に残るお金は少ない一方、それだけ多くの家賃収入が借入元金の返済に回っていました。
表面利回りは「満室想定の年間家賃 ÷ 購入価格」だけで計算された数字です。融資条件も、稼働率も、修繕費も、税金も、そこには一切入っていません。
物件を比較するときの入口の指標としては便利ですが、実際の手残りを判断するには、表面利回りだけでは不十分というのが私の実感です。
一棟アパート購入前にキャッシュフローをどうシミュレーションするか
では、購入前にどう計算すればよかったのか。私の失敗を踏まえて、7つのルールにまとめます。
稼働率と修繕費——2つの前提を厳しくするだけで、数字は変わる
私の2棟の実績が90.3%と94.31%だったことを考えると、シミュレーションの稼働率は85〜90%くらいが現実的だと思います。築古・郊外であれば、なおさらです。
修繕費は、実績ベースで考えると分かりやすいです。修繕費だけで見ると、1棟目が総収入の12.61%、2棟目が18.54%でした。
- 1棟目:修繕費12.61% + 募集費用8.17% = 20.78%
- 2棟目:修繕費18.54% + 募集費用3.55% = 22.09%
間取りも戸数も築年数も違う2棟なのに、「建物と入居付けにかかったコスト」の合計は、どちらも収入の20%強に収まりました。片方は退去が多く募集費が膨らみ、もう片方は退去が少ないかわりに大規模な修繕が来た。出方が違うだけで、合計はあまり変わらないということです。
もちろん2棟のサンプルにすぎませんが、築古の一棟アパートなら、修繕費と募集費用で収入の20%前後は毎年出ていく前提で計算する。これが私の実感です。
金利上昇は、もう「もしも」の話ではない
⑤について補足します。
日本銀行は2026年6月の金融政策決定会合で追加利上げを決定し、政策金利は1.00%になりました。変動金利で借りている場合、返済額の見直しは今後現実に起こりうる話です。
私の2棟目の条件(借入3,870万円・23年・変動2.6%)で、金利が1%上がるとどうなるかを試算してみます。
金利が1%上がるだけで、年間キャッシュフローは42万円から約18万円まで減ります。減少率にして6割です。
キャッシュフローが薄い物件ほど、金利上昇の影響は致命的になります。「今の金利で回るか」ではなく「1%、2%、3%上がっても回るか」で判断する。これから購入される方に強くおすすめしたい視点です。先ほども触れたように私の物件でもこの数年で借入金利が1.7倍になりました。今後はさらに金利が上がることが予想されます。事前のシミュレーションが非常に大事です。
今の金利ではなく、どの程度の上昇まで耐えることができるか計算しておきましょう。
何戸空いたら赤字になるかを、先に計算しておく
⑦は、私が1棟目の購入前に唯一やっていた、そして今でも正しかったと思っている作業です。
1棟目を買う前、私は満室想定32.6万円に対して空室率を10〜20%で振り、2部屋空いても赤字にはならないという水準を確認していました。逆に3部屋空いたら赤字です。そこは「起きたら自分の給与から補填する」と割り切って進みました。
この計算をしておくと、漠然とした不安が具体的な数字に変わります。最悪のケースを数字で把握できていれば、恐怖にはなりません。私が購入時にあまり不安を感じなかったのは、度胸があったからではなく、先に計算していたからだと思っています。
なお、自己資金や頭金をどう置くかについては、こちらの記事も参考にしてみてください。
一棟アパートはキャッシュフローがいくら残ればいいのか
「年間100万円あれば合格」といった基準を期待されているかもしれませんが、私はその手の断定はできないと思っています。
理由は単純で、投じた自己資金がいくらかによって、同じ100万円の意味がまったく変わるからです。
私の2棟で見てみます。
1棟目は年間21万円しか残りませんでしたが、その裏で年間215万円の借金が減っていました。6年7か月の累計では1,418万2,082円です。手残りが少ないことと、資産が増えていないことは、まったく別の話でした。
むしろ返済比率が高い=返済期間が短い物件は、家賃収入が現金ではなく、残債の圧縮というかたちで自己資本に変換され続けている状態です。だから1棟目は、キャッシュフローが薄いにもかかわらず、売却時に大きなリターンを生みました。
結果として、2棟の最終着地はこうなりました。
- 1棟目:4,000万円で売却。自己資金218万円 → 税引後約1,670万円(CAGR 36.2%)
- 2棟目:5,300万円で売却。自己資金837万円 → 税引後の回収額約1,750万円(CAGR 13.5%)
年間21万円と42万円のキャッシュフローしか生まなかった2棟が、最終的にはこうなったわけです。一棟アパートの収益は、キャッシュフロー・元本返済・売却益の3つの合計で見るものだと、私は考えています。
そのうえで、「いくら残ればいいか」を判断するときの視点を4つ挙げておきます。
- 自己資金に対する利回りで見る(CF ÷ 投下自己資金)。金額の大小だけで比べない
- 元本返済額を足して見る。手残りが薄くても資産が増えているケースがある
- 修繕リスクに耐えられるかで見る。年間CFを超える突発修繕は普通に起こる
- 金利が1%上がっても黒字かで見る。変動金利なら必須の確認です
私の場合、2棟目のキャッシュフロー42万円は、年間77万円の修繕費に耐えきれていませんでした。実際、ベランダの緊急修繕200万円弱を出した時点で、外壁工事に進むか売却するかの判断を迫られています。
年間キャッシュフローが、想定される突発修繕1件分に満たない——この状態は、かなり危ういと今なら分かります。ひとつの目安として、参考にしていただければと思います。
不動産投資のリスク全般については、こちらの記事にまとめています。
まとめ|利回りより「実際に残るお金」を見る
一棟アパートのキャッシュフローについて、私の実績から分かったことを整理します。
私が一番お伝えしたいのは、表面利回りは物件を探すための入口の数字でしかないということです。
11.5%の物件で年21万円、9.06%の物件で年42万円。この逆転は、利回りという指標が融資条件も稼働率も修繕費も募集費用も見ていないから起こります。
物件資料を見たら、利回りの数字を眺めるのではなく、紙とエクセルを開いて、自分で引き算をしてみてください。満室想定家賃に稼働率90%をかけて、返済を引き、管理費を5〜8%引き、修繕費と募集費用で20%引き、税金を引く。この5分の作業で、その物件が本当に自分の基準を満たすかどうかが見えてきます。
そして、出てきた金額が想像より小さくても、それだけで諦める必要はありません。私の1棟目のように、キャッシュフローが薄くても元本返済という形で資産が積み上がっているケースもあります。大事なのは、どちらのタイプの物件なのかを自分で理解したうえで買うことだと思います。
私自身、この2棟を運営するまでは「利回りが高ければ手残りも多い」と本気で思っていました。実際に数字を見て、ようやく理解できたことばかりです。私もまだ資産を築いている途中ですが、こうした失敗も含めて共有していければと思っています。
この記事で紹介した2棟の詳細は、それぞれの記事にまとめています。実際の購入経緯や売却結果まで含めて読んでいただくと、数字の背景が立体的に見えると思います。
是非ご参考になれば嬉しいです!

