
先日、売りに出していたアパートの契約・決済が完了しました。
2024年10月から売り出しを開始していたので、契約まで実に1年5か月かかってしまいました。途中で何度も「このまま売れないんじゃないか」と頭をよぎりましたが、最終的にはしっかり売り抜けることができました。
結果を先にお伝えすると、
- 税引後 ROI(投資利益率)666%
- CAGR(年率リターン):36.2%(保有期間6年7か月)
- 手残り合計:約1,670万円
もう少し高く売れた可能性もゼロではありませんが、「地方の耐用年数超え木造アパート」という難しい属性の物件で、ここまでの数字を残せたのは素直に満足しています。
今回は売却の記録を、数字をすべてオープンにしながらお伝えします。「一棟アパートを売ったらいくら残るの?」「地方物件って本当に売れるの?」という疑問をお持ちの方に、特に参考にしていただければ嬉しいです。
一棟アパートの売却タイミングや手残りがどれくらいか気になっている方に、特に読んでほしい内容です。
まず物件のスペックを公開します
どんな物件を売ったのか、先にスペックをお見せします。
いわゆる「地方・木造・耐用年数超え」という、融資のつきにくい属性の物件です。
一棟アパートを売却した理由
売却を決めた理由は、主に以下の2つです。
- ① 金利引き上げによる不動産市況の変化
- ② 資産整理・アセットの組み換え
今回売却した物件は、固定金利1.16%・15年という条件で借り入れているため、保有しているだけで元本がぐんぐん減っていく構造でした。「持ち続けるか、今売るか」を天秤にかけた結果、市況が良い今のうちに売り、資金を組み替えるという判断に至りました。
マクロな視点でも、売り時だと感じていました。2024年秋に日銀の利上げが始まり、不動産市況に変化の兆しが出てきた頃です。賃料・物件価格ともに高水準にある今のうちに動いておくべき、という判断でした。
ただ、実を言うと——本当はこの物件ではなく「もう一方の物件」を売りたかったんです。
もう一方の物件は、外壁工事の実施時期が迫っており、近いうちに大きな出費が見込まれていました。「どうせ修繕費がかかるなら、売って手を引いた方がいいんじゃないか」——そこで現金化して違うアセットに組み替えようと考えたのが最初のきっかけでした。
また、今後数年については株式・暗号資産のパフォーマンスが良さそうと見ており、一度現金に戻してアセットを組み替えたいという気持ちがあったので売却に踏み切りました。
売却の経緯——1年5か月かかった理由
売り出しから決済までのタイムラインです。
売り出しの1年5か月の間に、いくつか買付けのご連絡はいただきました。しかし、満額には届かず、また指値(値引き交渉)が想定より大きかったため、なかなか成約に至りませんでした。
最終的には売り出し価格5,080万円から4,000万円——約1,080万円の値下げでの成約となりました。大きな指値を受け入れる形にはなりましたが、「これ以上待っても条件は良くならない」と判断し、4,000万円で進めることを決断しました。
これだけ苦戦した理由は、物件の属性にあります。
- 地方都市の物件:都内・首都圏と比べて購入希望者が少ない
- 耐用年数超えの木造:金融機関の融資が厳しく、現金で動ける投資家に買い手が限定される
- 土地評価が物件価格の1/3程度:担保評価が低く、融資のつきにくさに拍車がかかる
- 金利上昇局面:投資家の購買意欲が全体的に低下していた
土地評価が物件価格の1/3程度しかないというのが非常にネックになっていました。購入当初から出口戦略について懸念していましたが、実際売却活動を始めてみると非常に苦労しました。担保評価が低いため金融機関の融資がつきにくく、現金で動ける投資家に限定されてしまい、今回の買主様は3,000万円の融資で残りの1,000万円を自己資金にて賄っていただきました。
「キャッシュで動ける買い手にしか売れない」という状況では、時間がかかるのはある意味必然でした。それでも1年5か月で売り切れたのは、後述する管理会社との関係性があったからだと感じています。
それでも利益が出た3つの理由
1,080万円も値下げして、なぜ最終的にしっかり利益が出たのか。理由は3つあります。
① 融資条件が良く、元本の減りが早かった
この物件の最大の武器は、固定金利1.16%・返済期間15年という融資条件でした。
一般的な不動産投資ローンは返済期間が20〜30年のことが多く、毎月の返済額に占める「元本分」は少なめで、利息分が大半を占めます。一方、15年という短い返済期間では、毎月の元本返済の割合が高く、保有しているだけで残債がぐんぐん減っていく構造になります。
売却時の残債が約1,982万円というのは、6年7か月で元本がかなり減った結果です。これが売却益の土台になりました。
② 市況が良かった(賃料・物件価格の上昇)
購入から売却までの6年7か月、不動産市況は全体的に上昇傾向でした。コロナ禍を経て物件価格が上がり、インフレにともない賃料も上昇。地方物件であっても、この波に乗れたことが大きかったです。
裏を返せば、今後は市況が変わりうるタイミングだったということでもあります。「高く売れる今のうちに動いておく」という判断は、売却後の市況の変化を見ても、結果的に正解だったと思っています。
③ 退去のたびに賃料を値上げし続けた
これが、自分で最もコントロールできた部分です。
購入当初の賃料は1室あたり34,000円でしたが、退去が出るたびに相場を確認しながら賃料を引き上げていきました。「空室を早く埋めたい」という気持ちから安易に値下げするのではなく、むしろ少し上げて募集する——この積み重ねが効いてきます。
7年間で+9,000円(+26%)の賃料アップ。これにより物件の表面利回りが高まり、売却時の利回りを高水準に保つことができたのが、買い手の目を引いた要因のひとつです。
投資不動産の売却価格は、利回りから逆算されることが多いです。「賃料が高い=高い売値が正当化される」という構造です。地道な賃料アップが、売却時にもじわじわと効いてくるわけです。
退去は賃料を上げるチャンス。相場を確認しながら積み重ねると、売却時の評価が変わります。
売却を任せた会社——管理会社にお願いした理由
売却の仲介は、この物件の管理を任せていた会社にお願いしました。
売却専門の不動産業者に依頼した方が、より多くの買い手候補にアプローチできるという考え方もあります。それでも私が管理会社を選んだ理由は、シンプルに3つです。
- 長年の付き合いで関係性ができていた:物件・入居者の状況をすべて把握してもらっていた
- 今後の取引も見据えて:次の物件購入でも引き続きお世話になる可能性があるため、関係を大切にしたかった
- 物件の強みを最もわかっている:管理の実態を熟知している業者が売主側についていると、買い手への説明がスムーズになる
1年5か月という時間はかかりましたが、管理会社との信頼関係があったからこそ、粘り強く動いてもらえたと感じています。
不動産の売却は、誰に任せるかで結果が大きく変わります。「手数料が安い業者」より「物件と自分のことをよく知っている業者」の方が、トータルで得をするケースも多いと思います。特に難しい属性の物件ほど、業者との関係性や信頼度が重要になってくると感じました。
売却結果を全公開——手残りはいくらになったか
いよいよ本題です。売却に関わった費用と手残りを、すべて公開します。
手残りは約1,670万円。投資元本は約218万円でしたので、元手の約7.6倍が手元に残ったことになります。
保有期間中のキャッシュフローを見ると、一般的な高収益物件と比べてかなり少ない水準です。月換算で17,800円程度になります。これは、固定金利1.16%・返済期間15年という短期間の融資を利用していたため、毎月の返済額に占める元本返済の割合が大きく、返済比率が高くなっていたことが主な要因です。
その結果、手元に残るキャッシュフローは抑えられましたが、その分だけ残債は着実かつスピーディーに減少していきました。不動産投資ではキャッシュフローの大きさに注目されがちですが、本物件は「毎月の利益を受け取る」のではなく、「元本返済によって資産を積み上げる」投資スタイルだったと言えます。
実際に売却時には、長期間にわたる元本返済によって大きく圧縮された残債と、購入時より改善した収益性を背景に、まとまった売却益(キャピタルゲイン)を得ることができました。保有中のキャッシュフローだけを見ると物足りなく感じるかもしれませんが、最終的には元本返済が資産形成に大きく貢献し、売却時の利益として還元された結果となりました。
不動産投資の成果は、保有中のキャッシュフローだけで判断できるものではありません。特に短期融資を活用した場合は、「キャッシュフロー」と「元本返済による純資産の増加」をセットで評価することが重要です。今回の事例は、そのことを実感できる結果となりました。
譲渡所得税の約342万円は、保有期間が5年超だったため長期譲渡の税率(約20%)が適用された結果です。
次に、今回の投資効率を2つの指標で確認します。どちらも「投資がどれだけ効率よくリターンを生んだか」を測る重要な指標です。
ROI(投資利益率)とは、「最初に投じた自己資金に対して、最終的にどれだけ利益を得られたか」を示す指標です。ROIが100%なら自己資金と同額の利益、666%なら自己資金の6.66倍の利益が出たことを意味します。不動産・株式・事業など、あらゆる投資を横断的に比較できる汎用的な指標でもあります。
CAGR(年平均成長率)とは、「投資期間全体のリターンを、1年あたりに均して換算した利率」のことです。保有期間が異なる投資を同じ土台で比べるときに使います。CAGRが36%なら「毎年36%ずつ複利で増えたのと同等の成果を上げた」という意味になります。
(売却価格 + CF累計 − 売却費用 − 残債 − 譲渡所得税 − 投資元本) ÷ 投資元本
=(40,000,000 + 1,406,835 − 1,460,070 − 19,822,326 − 3,418,011 − 2,179,539) ÷ 2,179,539
= 約666%
この数字が「一般的な不動産投資と比べてどれくらいの水準か」を確認するために、市場データと並べてみます。
一般的な一棟アパート(中古)の表面利回りは8〜12%程度が目安とされており、今回の物件は売り出し時11.50%・成約時11.04%と高水準でした。一方、実質利回りは4.8%でした。これは固定金利1.16%・15年という短期返済による高い元本返済額がキャッシュフローを圧迫したためです。実質利回りだけ見ると一般水準より低めに映りますが、その分だけ残債の減少スピードが速く、売却時の利益に大きく貢献しました。表面利回りと実質利回りはセットで確認することが重要だと、改めて実感しました。
一般的な一棟アパート(中古)の年率リターン目安は6〜8%程度。今回のCAGR 36.2%はその約5倍水準です。固定1.16%という低金利・短期融資と、賃料アップの積み重ねが大きく効いた結果といえます。
「持って良し、売って良し」——この物件を一言で表すとそんな感じです。
仮に売れなかったとしても、元本の減りが早く、キャッシュフローも入ってくるので、保有し続けること自体に意味がありました。売れたことで、その積み重ねがまとめて手元に戻ってきたイメージです。
まとめ——売却して気づいたこと、次にやること
結果としては、非常に満足しています。
1,080万円という大きな値引きを受け入れ、売却期間も1年5か月とかなり時間がかかってしまいました。地方・築古・耐用年数超えという、融資もつきにくく買い手も限られる条件のなかで、これだけの数字を残せたことは素直に嬉しいです。
もちろん、市況の追い風や運が重なった部分も大きかったと思っています。購入のタイミング、保有中の賃料上昇、売却を決断した時期——どれかひとつがズレていたら、結果は違っていたかもしれません。「再現性がある」と言い切れない部分があることは、正直に伝えておきたいです。
それでも、この経験を通じて学んだことは多くありました。融資条件の重要性、賃料管理の積み重ね、売却のタイミングと業者選び、そして譲渡所得税まで含めた出口戦略の大切さ。どれも、次の投資に活かせる財産です。
平凡なサラリーマンでも、正しく選んで地道に運営すれば資産は築けると、改めて実感できた6年7か月でした。
今回の売却でひとつ痛感したのが、譲渡所得税の重さです。
約342万円の税負担は、利益が出たからこそ発生するものなので、ありがたいことでもあります。ただ、「利益が出れば出るほど税金も増える」という現実は、実際に経験してみないとなかなかイメージしにくいものだと感じました。
不動産の場合、保有期間5年超で「長期譲渡所得」の税率(約20%)が適用されます。5年以内の短期売却だと約39%と倍近くになるため、出口戦略を考える際は保有期間もしっかり意識しておくことが大切です。
さて、一棟減ったことで、次の物件を買いたいという気持ちはあります。ただ今の市況では、金利が上昇してきており、数年前と比べると融資の条件も厳しくなっています。焦って動いても良い物件・良い条件には出合えないため、しばらくは株式や暗号資産などのアセットに資金を分散しながら待機するつもりです。
市況が落ち着いてきたタイミングで、今度は好立地でもう少し規模が大きい物件を狙っていきたいと考えています。地方の難しい物件でもここまで結果が出せたので、次はより再現性の高い物件選びをしていきたいです。
私はまだまだ資産形成の途中です。今回の売却はゴールではなく、次のステージへの踏み台だと思っています。
「地方の耐用年数超えアパートでも、正しく選んで正しく運営すれば、ちゃんと結果が出る」——そのことをお伝えできたなら、この記事を書いた意味があります。同じように資産を築こうとしている方の、少しでも参考になれば嬉しいです。

