投資マインド

不動産業者50社を回って気づいたこと|融資条件がバラバラな理由

不動産投資を始めようと複数の業者を回っていると、同じ質問をしているはずなのに、業者によって答えがまったく違う——そんな経験をした方は少なくないと思います。

「あの業者はできると言っていたのに、ここでは無理と言われた」「自分の資産では厳しいと言われたが、別の業者では問題ないと言われた」。こうした矛盾した情報に振り回されて、投資を始める前から気持ちが折れてしまう方もいます。

実際、私もまったく同じ経験をしました。本記事では、不動産業者を複数回ったからこそ気づいたこと、そして業者の言葉に一喜一憂しないために知っておくべきことをお伝えします。

この記事でわかること

  1. 業者によって融資条件の説明が異なる理由
  2. 1回断られても諦めてはいけない理由
  3. 自分に合う業者を見つけるための考え方

業者によって言うことが違うのは当たり前。1回断られても諦めず、複数の業者を当たり続けることが、不動産投資を前に進める唯一の方法です。

業者によって融資条件の説明がバラバラだった実例

実際に、ある金融機関の融資条件について複数の不動産業者にヒアリングしたところ、以下のような回答が返ってきました。

業者 融資条件についての回答
A業者 不動産会社に勤めている人はそもそもこの銀行は使えない
B業者 個人融資は年収700万円以上、または夫婦の共同出資の新設法人なら可能
C業者 年収500万円以上・貯金1,000万円程度あれば個人での融資が可能

同じ金融機関について聞いているにもかかわらず、3社の回答はまったく異なっていました。そのため、最初はどの情報を信じればよいのか判断がつかず、気持ちのアップダウンが激しかったことを覚えています。

なぜ業者によって言うことが違うのか

業者によって回答が異なる主な理由は、以下の3点です。

① 金融機関の融資条件は支店・担当者によって異なる

金融機関の融資条件は、本部が定める基準を基礎としながらも、支店や担当者の裁量によって運用が変わることがあります。そのため、同じ銀行でも「A支店では通る条件がB支店では通らない」というケースが実際に存在します。

また、担当者の経験値や得意とする顧客層によっても、提案できる融資スキームは異なります。つまり、業者が持っている情報はその業者が取引している支店・担当者からの情報に限られるため、必然的に回答にばらつきが生じます。

② 融資条件は時期によっても変化する

金融機関の融資姿勢は、景気動向・金融政策・金融庁の方針などによって定期的に変化します。そのため、半年前に聞いた情報が現在も正確とは限りません。業者が持っている情報も、取得したタイミングによって古くなっている場合があります。

実際、金融庁が公表している金融行政方針や、日本銀行の金融政策の変更によって、不動産向け融資の基準が締まったり緩んだりすることは珍しくありません。融資環境は常に変化しているという前提で情報を集めることが大切です。

以下のグラフは日本銀行の政策金利の推移です。2016年にマイナス金利が導入されて以降、低金利環境が続きましたが、2024年3月にマイナス金利が解除され、その後も段階的な利上げが実施されています。このように金融政策は大きく変化しており、それに伴って各金融機関の融資スタンスも変わり続けています。

日本銀行 政策金利の推移(2013年〜2025年) -0.1% 0% 0.25% 0.5% 0.75% 2013 2015 2016 2020 2024 2025 マイナス金利導入 マイナス金利解除 0.75%(2025年末) 出典:日本銀行「金融政策の推移」をもとに作成(概略値)
▲ 2016年のマイナス金利導入以降、低金利が続いたが2024年から正常化へ転換。融資環境も連動して変化しています

③ 業者によって得意とする金融機関・顧客層が異なる

不動産業者はそれぞれ、関係性の深い金融機関や得意とする顧客層を持っています。年収が高い会社員向けに融資をアレンジするのが得意な業者もあれば、自営業者や個人事業主向けの案件を多く手がけている業者もあります。

そのため、ある業者では「あなたの属性では難しい」と言われた案件でも、別の業者を通せばまったく問題なく進むケースがあります。業者の回答はあくまで「その業者のネットワーク内での回答」に過ぎないという認識を持つことが重要です。

また、下のグラフは不動産投資ローンで金利2%未満の融資を受けた投資家の割合推移です。楽待不動産投資新聞(2024年)のデータによると、2018年に73%だった2%未満の割合は2024年には50%まで低下しています。このように融資の条件は年々変化しており、同じ時期でも業者によって持っている情報に差が生じやすいことがわかります。

不動産投資ローン 金利2%未満で融資を受けた投資家の割合推移 40% 50% 60% 70% 80% 73% 2018下 62% 2019上 2020上 2021上 2022上 53% 2023上 50% 2024上 出典:楽待不動産投資新聞「いま融資がおりる金融機関 370事例」(2024年)をもとに作成
▲ 低金利融資を受けられる割合は2018年の73%から2024年には50%まで低下。融資環境は年々厳しくなっています

業者の回答は「その業者が知っている範囲での情報」です。1社の回答を絶対視しないことが大切です。

1回断られても諦めてはいけない理由

業者を回っていると、「あなたの資産状況では不動産投資は厳しい」と言われることがあります。しかし、その言葉を鵜呑みにして行動をやめてしまうのは、非常にもったいないことです。

なぜなら、前述のとおり業者が持っている情報はその業者のネットワーク内に限られるからです。ある業者にとって「難しい」案件でも、別の業者にとっては「十分対応できる」案件であることは珍しくありません。

重要なのは、断られた事実ではなく、なぜ断られたのかを正確に把握することです。断られた理由が明確になれば、それを解消するための対策を取ることができます。また、別の業者や金融機関に当たることで、同じ属性・資産状況でも融資が通るルートが見つかる可能性があります。

断られやすい主な理由と対策

断られやすい理由 考えられる対策
年収が基準に満たない 収入の高い業種・職種へ転職、副業収入の積み上げ
自己資金(貯金)が少ない 毎月の積立を継続し、一定額に達するまで待つ
他のローン残債が多い 既存ローンを繰り上げ返済して負債比率を下げる
勤続年数が短い 現職での勤続年数を積み上げてから再挑戦する
物件の担保評価が低い 担保評価の高い別の物件・エリアで再検討する

断られた理由を明確にしたうえで、上記のような対策を講じながら複数の業者に当たり続けることが、融資承認への近道になります。

また、金融機関の種類によって融資のしやすさや対象となる属性が大きく異なる点も覚えておくと有効です。以下のグラフは金融機関の種類別の特徴をまとめたものです。

金融機関の種類別 融資スタンス比較 金融機関の種類 融資の難易度 主な対象属性 特徴 メガバンク ★★★★★ 非常に難しい 大企業勤務・高年収 審査基準が最も厳格 地方銀行 ★★★☆☆ やや難しい 中堅会社員・地域密着 エリア限定あり 信用金庫・信用組合 ★★☆☆☆ 比較的通りやすい 地域在住・事業主も可 地域内物件が条件 日本政策金融公庫 ★★☆☆☆ 比較的通りやすい 初心者・自営業者も可 自分で直接申込が必要 ノンバンク ★☆☆☆☆ 通りやすい 属性不問が多い 金利が高めになる傾向 出典:各金融機関の融資条件をもとに作成(目安。物件・時期により変動あり)
▲ 金融機関の種類によって対象属性や審査基準が大きく異なります。自分の属性に合った機関を業者に相談してみましょう

参考データ:年収別の借入可能額目安と融資審査の主要チェック項目

業者を回る前に、自分の年収でどの程度の融資が見込めるかを把握しておくと、業者との会話がスムーズになります。一般的に不動産投資ローンの借入可能額は年収の7〜10倍程度が目安とされています(INVASE「不動産投資ローンの借入可能額」より)。

年収別・不動産投資ローン借入可能額の目安 最小目安(年収×7倍) 最大目安(年収×10倍) 0 2,500万 5,000万 7,500万 1億円 年収400万 2,800〜4,000万 年収500万 3,500〜5,000万 年収700万 4,900〜7,000万 年収1,000万 7,000〜1億円 融資選択肢が広がる 年収700万の目安 出典:INVASE「不動産投資ローンの借入可能額」、各社融資情報をもとに作成(目安値)
▲ 年収700万円超で融資を受けられる金融機関の選択肢が大きく広がります。年収に応じた現実的な目安を把握しておきましょう

また、融資審査では年収だけでなく複数の属性が総合的に評価されます。以下は、主な審査項目とその重要度の目安をまとめたものです(INVASE「不動産投資ローン審査の評価項目」をもとに作成)。業者によってどの属性を重視する金融機関と取引しているかが異なるため、同じ人でも業者によって回答が変わる背景の一因になっています。

融資審査で見られる主な属性項目と重要度の目安 審査項目 重要度(一般的な目安) 年収・収入の安定性 ★★★★★ 勤務先・雇用形態 ★★★★☆ 自己資金・金融資産 ★★★★☆ 他の借入残債 ★★★☆☆ 勤続年数 ★★☆☆☆ 物件の担保・収益評価 ★★★☆☆ 出典:INVASE「不動産投資ローン審査の評価項目」等をもとに作成(金融機関・時期により異なります)
▲ 融資審査は年収だけで決まりません。金融資産・借入残債・勤務先なども複合的に評価されます

自分に合う業者を見つけるための考え方

複数の業者を回る中で、どの業者を信頼すべきかを見極めるためには、以下の点を意識することが有効です。

① 「なぜそうなのか」を説明できる業者を選ぶ

「できません」「難しいです」という回答だけで終わる業者は、情報の根拠が不明確な場合があります。一方で、「この金融機関はこういう理由でこの属性には難しく、代わりにこちらの金融機関なら可能性があります」といった形で理由と代替案を説明できる業者は、信頼性が高いと言えます。

② 自分の属性・状況を正直に伝える

業者に曖昧な情報を伝えると、回答もまた曖昧なものになります。年収・勤続年数・自己資金・既存ローン残債など、融資審査に関係する情報は最初から正確に開示することで、より精度の高いアドバイスを受けられます。

正直に伝えることで「この条件では難しい」と言われることもありますが、それはむしろ正確な情報を持っている業者である証拠です。現状を正確に把握したうえで、次の打ち手を考える方が結果的に時間の節約になります。

③ 複数の業者と並行して関係を構築する

1社に絞って深く関係を築くよりも、まずは複数の業者と浅く広く関係を持ち、その中から信頼できる業者を絞り込んでいく方が効率的です。業者側も、真剣に動いている投資家に対しては優良な情報を優先的に提供してくれる傾向があります。

私自身、1棟目の物件を購入するまでの過程で50社以上の業者にメールを送り、実際に面談できたのは10社ほどでした。その中で本当に頼りになると感じた業者は1社だけでしたが、その1社との関係があったからこそ最初の物件を取得できました。数を当たることの重要性を、改めて実感しています。

不動産業者を回る際の注意点

複数の業者を回る際に、あわせて意識しておきたい点をまとめます。

  1. 1社の情報を鵜呑みにしない:前述のとおり、業者の情報はその業者のネットワーク内に限られます。必ず複数社で確認するようにしてください
  2. 融資の事前相談は慎重に:金融機関への正式な融資申込みは審査履歴として残るため、複数の金融機関に同時並行で申し込むと審査に悪影響を与える場合があります。まずは業者を通じた非公式なヒアリングから始めることを推奨します
  3. 最新の融資情報を持っている業者を優先する:融資環境は変化するため、直近の取引実績が豊富な業者の情報の方が信頼性が高くなります
  4. 断られた理由を必ず確認する:理由を明確にすることで、次の手を打てます。理由を教えてくれない業者とは長期的な関係を築きにくいため、別の業者を当たる方が得策です

まとめ

不動産業者を複数回ると、融資条件についての説明が業者によってまったく異なることに戸惑う方は多いと思います。しかし、それは業者が嘘をついているわけではなく、それぞれが持っているネットワークや情報の範囲で答えているからに過ぎません。

したがって、1社の回答だけで「自分には無理だ」と判断するのは早計です。断られた理由を正確に把握し、別の業者や金融機関に当たり続けることで、道は必ず開けます。

不動産投資は、行動量がそのまま結果につながる世界です。業者を回る手間を惜しまず、粘り強く動き続けることが、最初の1棟を手に入れるための最短ルートだと、私は実体験を通じて確信しています。

不動産投資のリスク管理については不動産投資のリスクと対策、法人化の検討については法人化のメリット・デメリットの記事もあわせてご覧ください。